Yuki MATSUKAWA@TUS


その他

作ったもの

博士後期課程学生の奨学金事情

詳細

私自身の奨学金戦歴

私自身は 2022 年 5 月(M2)に独立行政法人日本学術振興会特別研究員(以下,学振)DC1 に応募しましたが惜しくも不採用 A となりました.元々当時働いていた塾講師のアルバイトは修士修了と共に辞めるつもりだったので,当然これでは博士課程に入学しても食べていけません.そこで,最近始まった博士課程の支援制度である,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「次世代研究者挑戦的研究プログラム」(以下,次世代)と「東京理科大学マテリアル人材フェローシップ制度」(以下,マテリアル)の両方に応募しました(2023 年 3 月末,M2).この二つは現在統合され,「東京理科大学イノベーティブ博士人材育成のための共創力強化プロジェクト」となったようです.また,東京理科大学独自の奨学金制度である「乾坤の真理奨学金(DS)」への応募も考えましたが,給付額が少なかったため応募しませんでした.
応募の結果,2023 年 4 月末(D1)に JST 次世代の方に採択していただきました.正直,生活費の観点では DC とほとんど変わらない待遇だったので JST 次世代でもあまり問題はありませんでした.ただ,前年に DC1 が不採用 A という非常に惜しい結果だったので,私としてはせっかくだから DC に再度チャレンジしてもいいのではと思い,申請することにしました(実際には他にも理由があります.2023 年 5 月,D1).
DC2 は無事採用内定をいただくことができ,2024 年 4 月(D2)から特別研究員としての肩書きが加わりました(JST 次世代は辞退).

時系列

副次的に,博士後期課程入学に関連する時系列も記載しています.理科大で D 進する人は参考にしてください.
2022 年 5 月 16 日(M2)学振 DC1 申請(学内締切)
2022 年 9 月 28 日 学振 DC1 不採用 A
2023 年 2 月 14 日 修士論文審査会
2023 年 2 月 25 日 博士後期課程入試
2023 年 3 月 9 日 博士後期課程入試合格
2023 年 3 月末 次世代,マテリアル申請
2023 年 4 月 24 日(D1)次世代採択(片方に採択されたらもう片方は自動的に辞退)
2023 年 5 月 15 日 学振 DC2 申請(学内締切)
2023 年 9 月 27 日 学振 DC2 採用内定
2024 年 3 月 次世代辞退
2024 年 4 月(D2)–現在 学振特別研究員(DC2)[令和 6 年度 DC2 採用者一覧]

日本学術振興会特別研究員採用者のスコア開示請求

詳細

はじめに

ここでは日本学術振興会特別研究員(以下,学振)採用者のスコア開示請求手順について説明します.後の「なぜわざわざ開示請求するのか」の項目で詳細に書きますが,学振特別研究員に不採用となった際は申請書の評価や不採用者内でのおおよその順位が開示されるにもかかわらず,採用された場合は採用されたことしかわかりません.しかし,正しい手順を踏めば採用者であっても日本学術振興会にスコア開示請求できるという事実はあまり知られていないようです.この記事は X(旧 Twitter)に投稿された こちらの内容 を参考に,私自身(と友人)が実際にスコア開示請求した際の体験談を書きます.今後,学振特別研究員のスコア開示請求を考えている方や,東京理科大学での博士後期課程進学を考えている方の役に立てば幸いです.また,東京理科大学研究推進課が主催した「令和 7 年度採用分日本学術振興会特別研究員学内説明会」でもこの記事の内容と同様の講演をしています. そもそもなぜ電子申請システム上での採用者のスコア開示が行われないのかは私にはよくわかりませんが,きっと大人の事情があるのでしょう.もしかしたら今後制度が変わって採用者も採用と同時にスコアを確認できるようになるかもしれません.その日が来たらこの記事は不要ですね.

採用者の開示請求手順(写しの交付,つまり郵送での開示の場合)

X における上のポストを見て自分でできる人はここを読まなくてもいいと思います.ただ,実際に自分でやってみて思ったよりも面倒だったので(X と異なり)字数制限の無いこの場でまとめておくのがよいと思いました.ただし,以下の手順は 2023 年 2 月現在の情報です.
  1. 日本学術振興会ウェブページ「個人情報保護のご案内」にアクセス
  2. 「個人情報に係る様式」⇒「開示請求書」を記入
  3. 必要書類を郵送(現金を送るので現金書留の封筒に入れて郵送
    宛名:独立行政法人 日本学術振興会 個人情報保護室御中
    • 保有個人情報開示請求書(上記「開示請求書」)
      • 住所はたぶん大学よりも自宅がよい(住民票を同封するため住民票の住所が無難?)
      • 「開示を請求する保有個人情報」の書き方の例:
        令和 6 年度採用分特別研究員(DC2)選考における評価(各評点結果,総合評価 T スコア)
        受付番号:xxxxxxxxx

        (受付番号が無いと電話がかかってくるらしい)
      • 開示方法を選択(窓口での閲覧 or 写しの交付)
    • 住民票の写し(入手にもお金がかかる)
      • 開示請求の前 30 日以内に作成されたもの
      • マイナンバーの記載は不要.記載がある場合は黒塗り(黒塗りしないと電話がかかってくるらしい)
    • 本人確認書類(運転免許証等)のコピー(マイナンバーカードの場合は表面のみコピー)
    • 現金 300 円
  4. レターパックで学振から開示決定通知が到着(書類提出から約 20 日で到着)
  5. 必要書類を郵送(現金は送らないので定形郵便でよい
    • 「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」(レターパックに同封されている)
    • 送付に要する費用 280 円(返信用切手
  6. 特定記録で学振から開示結果が到着(申出書受理から 2 週間以内に発送⇒これは明記されている)

なぜわざわざ開示請求するのか

私が考える,採用者が(わざわざ)スコア開示請求するメリットは以下の通りです.
  1. 現時点での自分の執筆能力の確認
  2. 後輩へ情報を残す
  3. 自己満足
まず,1. の項目から説明します.上の「私自身の奨学金戦歴」でも書いたように,私は学振特別研究員に申請し,不採用も採用も両方経験しています.学振特別研究員に不採用となった場合は学振の電子申請システム上で不採用者の中のおおよその順位を確認できます(不採用 A, B, C).また,自身の申請書の評点結果(複数の担当審査員による平均値)が三項目で表示されます.さらに,T スコアを使えば書面審査セット内の順位も算出可能なため,次年度の申請の際に大いに役立ちます.しかし,採用された場合は電子申請システム上で具体的な評価に関する内容は一切表示されません.学振 PD なども含め,申請者が今後研究者としてさまざまな申請書を書くことになるのであれば,その時点での研究者としての能力,申請書執筆能力が審査員にどのように評価されているのかを知ることは非常に重要です.採用されているとはいえ,全ての項目が総じて高い評価を得ているとも限りません.例えば「研究計画の着想およびオリジナリティ」の評価が他よりも低いのであれば,博士課程の期間に自身が伸ばすべき項目は研究に対してのオリジナリティということは一目瞭然ですよね.また,概ね自分の予想通りの点数であれば自分の能力に対してある程度妥当な評価ができていることになります.しかし,自分の予想と大きく異なっていた場合,自分の能力を過大評価もしくは過小評価している可能性があり,今後注意する必要があるでしょう.
次に 2. の項目について説明します.毎年数名博士課程に進学するような研究室であれば情報の蓄積は問題無いでしょう.しかし,そうでない場合は先輩たちの申請書やスコアなど,少しでも多くの情報があった方がいいです.不採用だった人の順位やスコアも重要ですが,採用された人がどれくらいの順位で採用されたのか(ぶっちぎり or 当落ギリギリ)という情報も重要です.また,採用された申請書であってもすべての内容が優れているわけではありません.過去の申請書がどの項目を高く評価され,どの項目を低く評価されたのかを知ることはよい申請書を書く第一歩です.
最後に 3. ですが,なんだかんだ言って自己満足も大きいと思います.いい点数を取れたら嬉しいのは,小学校のテストから変わらない感情ではないでしょうか.それが研究のモチベに繋がるかもしれません.ただし,高い点数を取れたからと驕り高ぶったり自身の能力に胡坐をかいたりするのはよい姿勢ではないので注意しましょう.

日々の記録

かなり雑多な項目です.日々の研究の記録や報告事項を書き連ねます.

2025 年

詳細

3 月 3 日(月) 関東学生会第 64 回学生員卒業研究発表講演会

2025 年 3 月 3 日(月)に埼玉大学で開催された関東学生会第 64 回学生員卒業研究発表講演会(主催:日本機械学会)で共同研究者の大野僚子さんが講演しました. チャネル流で乱流域から Reynolds 数を下げて遷移 Reynolds 数に到達する際の,減速パラメータと流動現象の応答を調査したものになります.

1 月 17 日(金) 第 36 回乱流制御研究会で最優秀賞を受賞

2025 年 1 月 17 日(金)に芝浦工業大学豊洲キャンパスで開催された第 36 回乱流制御研究会で最優秀賞(Best Presentation Award)を受賞しました! 先日アクセプトされた論文(Matsukawa and Tsukahara, Int. J. Heat Fluid Flow, 2025)の内容を一部抜粋,特に流動現象の異方性に焦点を当てて講演しました. [表彰ページ]

2024 年

詳細

12 月 6 日(金) 英文学術誌 Int. J. Heat Fluid Flow に論文が掲載

松川が筆頭著者の論文が英文学術誌 International Journal of Heat and Fluid Flow(IF: 2.6)に掲載されました!

Y. Matsukawa and T. Tsukahara, "Switching between supercritical and subcritical turbulent transitions in inner cylinder rotating Taylor–Couette–Poiseuille flow," International Journal of Heat and Fluid Flow, 112 (2025), 109667. [Web Page (Open Access)]

外円筒が静止した状態の Taylor–Couette–Poiseuille 流で生じる層流化現象および超臨界・亜臨界遷移現象の切り替わりについて述べた論文です.本研究で対象とした円筒比 $\eta \equiv r_\rmin/r_\rmout = 0.883$ の流れでは,内円筒回転 Reynolds 数 $\Re_\rmin \equiv u_\rmin h/\nu = 130, 150, 1300$ で典型的な超臨界遷移現象の Taylor 渦,波状 Taylor 渦,変調波状 Taylor 渦が生じます($r_\rmin, r_\rmout$:内円筒,外円筒半径,$u_\rmin$:内円筒回転速度,$h = r_\rmout - r_\rmin$:ギャップ幅,$\nu$:動粘性係数).これらの流動構造に対して軸方向圧力勾配駆動を与えると,完全層流化を経たのちに亜臨界遷移現象の乱流ストライプが発生します.生じた現象に対して各種乱流統計量を用いることで乱れの強さや異方性を定量評価しました.
また,この論文はイタリアのローマで開催された乱流・熱輸送に関する国際学会 10th International Symposium on Turbulence, Heat and Mass Transfer (THMT'23) の講演論文が優秀と認められ,International Journal of Heat and Fluid Flow の特集号に招待されたものです.

11 月 28 日(木) 【非公式】東京理科大学創域理工学部機械航空宇宙工学科 学位論文 LaTeX テンプレートの作成

最近,機械航空宇宙工学科および機械航空宇宙工学専攻 「非公式」の学位論文 LaTeX テンプレートを作成しました.塚原研究室の GitHub Organization で公開しています[入手は こちら].研究室で以前から使用していた学位論文テンプレートは結構古く,pLaTeX の使用を前提としていたほか BibTeX の機能も備わっていないため,現代の LaTeX 事情には合わない仕様でした.そういうわけで,学科の学位論文要項を満たし,最新の LaTeX の技術をふんだんに盛り込んだ学位論文 LaTeX テンプレートを新しく作りたいという思いが結構前からありました.また,世の中に出回っている LaTeX の書籍は非常に充実した内容で書かれていますが,あまりにも情報量が多いため「本当の」LaTeX 初心者にはとっつきにくいのではと感じていました.そこで,「本当の」LaTeX 初心者が学位論文を書き上げること「だけ」を目標にした際に必要な情報を集めた マニュアル を併せて作成しました.
今回新たに取り入れた内容としては,
  1. LuaLaTeX でのタイプセット
  2. jlreq クラスの使用
  3. unicode-math の使用
  4. BibTeX の使用(JSME-bst
などがあります.
1. pLaTeX はレガシー LaTeX ですからモダン LaTeX である LuaLaTeX に移行したかったのと,最近 (u)pLaTeX が危ない という話をよく聞くようになったのでさすがにまずいなと感じたからです.ただ正直,学位論文レベルの長さになると LuaLaTeX のタイプセットがやはり遅いなと感じます.最近は Typst が話題で,LaTeX から移行している人も多いようですが,現状学術の世界では LaTeX が圧倒的なシェアとなっている以上,まだしばらくは LaTeX から離れることはできないでしょう.私も Typst 使いこなしたいですね.
2. jlreq はとてもいいですね~.カスタマイズしやすかったです.ただ,学位論文を書くだけのユーザーにとってはメリットが一切ないのでここは完全に私の自己満足です.
3. せっかく LuaLaTeX の導入でモダンになったのだから数式まわりも unicode-math でモダンにしようと思い,導入しました.
4. 私が作成した「非公式」日本機械学会仕様の BibTeX スタイルファイル JSME-bst を使用しています.「最新の技術を使用したテンプレートにするなら biblatex を使えよ」と言われそうですが,biblatex で日本機械学会仕様を完璧に再現するのは大変そうだったので一旦 BibTeX で勘弁してほしいです.そのうち置き換えるかもしれませんが.

11 月 15 日(金) ウェブページのリニューアル

ウェブページをリニューアルしました.元々 Google Sites で作成・管理していましたが,コードで書きたくなったのと,自由度が欲しくなったので GitHub Pages を利用することにしました.